2017年「アニー」雑感
4月26日(水)に、新国立劇場中劇場で、
丸美屋食品ミュージカル「アニー」
演出:山田和也、音楽監督:佐橋俊彦、振付・ステージング:広崎うらん、翻訳:平田綾子、美術:二村周作、衣裳:朝月真次郎、訳詞:瀬戸千也子 土器屋利行(フーバービル) 片桐和子(トゥモロー)
を見たので、
以下は、新演出を見ての少しの憶え書き。
4月26日は、2ステージあって、
午後1時開演(チーム・バケツ)と、午後5時開演(チーム・モップ)。
上演時間は、『第1幕 約70分、休憩20分、第2幕 約55分』と掲出されていた。
じっさいは、1時開演の回で、カーテンコールの幕が下り、その後のオーケストラ演奏が終わって、3時33分ぐらいになっていた。
幕が上がると孤児院のベッドが、斜めに置かれている。ベッドは、手前が下手から、モリー、ケイト、テシー。後ろが、二段ベッドで、ダフィの上がアニー、ジュライの上がペパー。
孤児たちは、衣裳や帽子で見分けがつけやすくなった。はじめて見る子役ばかりだとしても、すぐに見分けられるようになる。
最初の孤児院の場で、子役を見分けておけば、「N.Y.C」のときに、孤児ではない役で出て来ても、どれがだれと分かるでしょう。
いくら寒いのだとしても、孤児たちは靴(上履き?)を履いたまま寝ているのか、とか、アニー、ペパー、ケイトは屋内なのに帽子をかぶっているが・・・とくにペパーは帽子をずっととらないまま(「N.Y.C」ではちがう帽子になるが)。ケイトは「フリードレス」で、帽子をかぶっていない時間があるが、ほとんど帽子。
孤児たちは、やけにちゃんとしたかわいい髪形をしていて、ハニガンは、孤児たちに冷たい割りには女児っ子の髪をいじるのが好きなのか、など、思うところあり。
ハニガンの衣裳には、国芳(のかな?)の猫の絵が描かれていたり、また他にも浮世絵柄のものがあったけれど、あの時代のニューヨークではああいう服が売られていたってことなの?
今度の孤児院に、階段はない。
階段といえば、第一幕では、ウォーバックス邸の大階段もなくて、階段なしでやるのかと思ったら、第二幕になると、ウォーバックス邸に階段が出現する。劇団四季版「サウンド・オブ・ミュージック」のトラップ邸にあったような階段で、この階段も他のセットと同様に可動式である。
アニーは「メイビー」をうたいながら、上手のほうまで歩いてくれたりする。でも、この舞台を見る座席は、下手側の(端の)ほうが絶対によいと思う。
アニー以外の6人の孤児たちは、第一幕での出演シーンが増えた。
アニーのかつらは、少し長めの縮れ毛で、これは帽子をかぶっていると、なかなかかわいい。第二幕の養子縁組披露パーティーで、バッチリ決めるためにおめかしすると、短くなって、おなじみのあの頭になる。
今回の新演出では、新国立劇場中劇場の奥舞台をたっぷり使っているのが見どころのひとつ。
篠崎光正演出の「アニー」は、回り舞台、大迫り、24分割のステージなど、青山劇場の舞台機構を駆使する演出だったが、今回は、新国立劇場中劇場の奥に深いステージを活かしたところが特長といえそう。その代わりに、セットのほとんどは可動式で、ソデから出し入れしている。
孤児役の子役も退場するときに、ベッドのお片付けを担ったり。
大迫りを上げ下げすると、その前後のシーンでは、アクティングスペースが舞台手前に限られることにもなるが、迫りを使わない今回の新演出ではその制約がないので、たとえば、アニーがサンディと出会い「トゥモロー」をうたう場面では、シーンに奥行きがあって、いままでとはちがう景色。
もっとすごいのは、ウォーバックス邸で、舞台の奥にドアがあって(このドアは吊りものだが)、グレースに連れられたアニーがその舞台奥のドアから入って来るところは、遠近感にも彩られて、まさに、はじめて見る景色が現出する。
ちなみに、アニーがウォーバックス邸にやって来る途中で買ってもらったコートは、赤。
今回の新演出では、翻訳も新しくなるとのことだったが、ミュージカルナンバーの訳詞は以前のままのようだ。メインナンバーの「トゥモロー」はむかしからの片桐和子訳詞でうたわれていたし、他のいくつかのナンバーも、販売されているCDで確認出来る範囲では、瀬戸千也子訳詞のままである。
復活したフーバービルのナンバーは、土器屋利行訳詞とクレジットされている。
そのフーバービル。篠崎演出版では、まず「フーバー・ビル」のナンバーがうたわれて、うたが終わると、サンディを連れたアニーが登場していたが、今回の新演出では、まずアニーとサンディが出て、そこで失業者たちとセリフのやりとり(ポケットはあるわとか、寝ながら新聞が読めるとかの)があったあとに、うたになって、フーバービルのナンバーではアニーにもちびソロがある。
サンディは、どちらもあまりいうことをきかなそう。野村里桜アニーは、「トゥモロー」をうたいながら、だんだんとサンディに引きずられて立ち位置がずれて行くなど、けっこうてこずらされていそうに見えた。
会百花アニーのサンディは、おとなしそうだったが、呼んでもちっとも来ないし、立ち止まったり戻ろうとしたり。それでもアニーは自分から迎えに行くでもなく、サンディを呼び続けて、ずいぶんと引っぱるのだなぁ、と思って見ていたが・・・これは、サンディが来ない場合は、自分から行かずに、犬係のひとが連れて来てくれるのを待つみたいなことになっているのかな?
髪の毛のある藤本隆宏ウォーバックスは、精悍で、予想以上に貫禄も。「王様と私」だって、スキンヘッドのシャム王がいれば、髪のあるシャム王もいるのだから、オリバー・ウォーバックスがスキンヘッドでなくてもいいね、と思わせるぐらいに、適役。
その、ウォーバックス邸では、グレースのジェスチャー(映画)が、長ーい!
ダンスキッズは、「N.Y.C」と、二幕のウォーバックス邸での「ニュー・ディール・フォー・クリスマス」に登場する。「N.Y.C」では、田舎から出て来て、大道芸みたいなことをしていた子どもたちが、未来のスターといっしょに、ブロードウェイのショーダンサーに変身、みたいな設定なのでしょうか?
余談だが、休憩時間には、ロビーで、今年もシュークリームを売っていた。
第二幕がはじまる前には、二幕の幕開きのラジオのシーンのための「拍手の練習」が行なわれる。
ハニガン、ルースター、リリーの3人悪企みの場は、ジョエル・ビショッフ演出版と同じで、2回ある。(篠崎演出時代のように、1回にまとめちゃえばいいのに、と思った) ついでに書くと、ハニガン、ルースター、リリーは、最後(ニュー・ディール・フォー・クリスマス)は、なぜか天使の姿に。
ホワイトハウスでは、アニーが後ろ向きに(客席に背中を向けて)、椅子に座るという斬新(?)な場面も。
アニーは両親のことを、「ママ、パパ」といっていた。必ず、ママのほうが先である。
カーテンコールも含めて、キャストが客席通路を使用するシーンは、なし。
今回の「アニー」新演出のセットや転換について、たとえば、「ライオンキング」のプライドロックは迫り上がるのが当たり前で、移動式のプライドロックなんて認めない、みたいなのと同じような賛否ってないのかな? ウォーバックス邸の移動する階段を見たら、移動するプライドロックを連想しちゃう。