横浜市民ミュージカル マルコポーロの夢 (関内ホール 大ホール)


もう何か月も経ってしまったけれど…、以下は、書きかけだったテキストの蔵出し。もう少し加筆するつもりでいたが、いまさらそれはやめて、「てにをは」をいじっただけで中途半端ですが、2月上旬に書いたものを、ほぼそのままで。


1月26日(日)に、横浜・関内ホール 大ホールで、

ドラマが眠る街“横浜”/横濱開港物語
横浜市民ミュージカル
マルコポーロの夢」

(脚本・演出・振付・作詞・美術:福島桂子、音楽監督・作曲・作詞:天野一平、原案:松永春)

を観劇。

2回公演あって、1回目が、11時開演。2回目が、16時開演。座席は、自由席。

上演時間は、2時間25分(休憩15分を含む)。ただし、2回目は、5分ぐらい早く終わった。

横浜までは往復とも湘南新宿ライングリーン車を利用して、ちょっとした旅気分。横浜で乗り換えて、2駅目が関内。


入場料は、「一般2000円、中学生以下1000円」で、昨年の横浜市民ミュージカル「3人ジェラ―ル!?」と較べると、一般料金が200円の値上がり。

無料配付の公演プログラムは、表紙込み32ページカラー。

出演者は、65名(このうち、小・中学生は、29名)。さらに、ゲストパフォーマーが、元劇団四季の渡井真一を含む8人。

市民出演者の配役の多くが1回目と2回目でダブルキャストになっていて役替りする。また、ほとんどの出演者は、1ステージで複数の役を演じている。これは、2年前に、当時の中区民ミュージカルをはじめて見たときから同様である。

たとえば、ダブルキャストになっている主役・大地役の子が、別の回では大地をいじめる役を演じたりするのは、ある種の常套的な配役でもあるが、そうしたキャスティングが、おもしろさを加速させる要因のひとつ。


今年は、1階客席の1列がなくて、2列が最前列になっていた(昨年、一昨年は、中央ブロックは1列から座席があった)。

2列が最前列だと、ほどよい距離で、とても見やすい。余談だけれど、横浜市民ミュージカルは、1列の最前列に座ったときには、ステージ上にある機材が視界に入るので、けっこう気になっていた。

1列が最前列だったときは埋まるのが遅くて、慌てなくても座れたのに、2列が最前列になった今回は、2回目のステージでは最前列に座り損ねた(自由席の公演だと、たいてい最前列に座るのに、座れないとけっこうショックだ…)。

1列がなくなった部分は、キャストが通るなど演技スペースとしても使用され、今年は、客席通路を使う場面が増えていた印象。

音楽は、1階客席前方の上手ブロックの座席を撤去して、そこで、4人のミュージシャンによる生演奏。


マルコポーロに憧れる少年・大地(劇中のセリフによれば、フルネームは「しばただいち」)が、白ずくめの変なおじさん(このおじさんが、実はマルコポーロ。2009年の上演時のダイジェスト映像を見ると黒ずくめの衣裳だが、今年の再演では対照的な白の衣裳になっていた)に導かれて、時空を超えた冒険の旅に出かける。
まずは幕末の横浜にタイムスリップして黒船でやって来た宣教師が英語塾を開くエピソードのデフォルメ、続いて開明期に起こったマリア・ルス号事件の目撃者となり、鉄道開通のにぎわいに触れ、さらには少年時代のマルコポーロとの出会いを体験する、というストーリー。

(それら、大地少年が体験する劇中のメインエピソードは、オムニバス的で、必ずしも関連づけられるものではないのだが、舞台に惹き込まれるとあまり気にならない)

自分の居場所を見つけられないでいた少年が、異世界(過去)での見聞と出会いを糧に、ひと回り成長するという、子どもが主人公の冒険ファンタジーミュージカルの常套を踏んだ構成。まずは、幕開きから大地が冒険に旅立つまでの序盤が、展開の手際よさとミュージカルらしいわくわく感が融合して、なんともすばらしい。

もっとすばらしいのは、終盤で大地がマルコ(少年時代のマルコポーロ)と出会い、心を通わすシーンだ。胸があつくなる。涙で目が曇って、せっかくのいいシーンがよく見えなくて、困った。

おなじみの妖精ノップが現われるポイントや劇中での役割がストーリーの運びとぴったりかみ合って効果的なのも、この「マルコポーロの夢」が好舞台である要因のひとつだろう。ノップが子どもだけのキャスティングだったのも、子どもが主演であることとマッチしていて、よかった。ノップが登場して、劇中ナンバーにノップの子どもたちのうた声が重なって行くシーンには、心を揺さぶられる。

メインナンバーとして何度かうたわれる「夢は叶う」が、とてもいい曲。舞台の幕開きと掉尾も飾って、まさに名曲。


地元横浜と関わりの深い人物や出来事を劇中で取り上げるのが、この横浜市民(中区民)ミュージカルのお約束のようだが、「マルコポーロの夢」では、マリア・ルス号事件が主に扱われる。
一昨年の「キリシタンの魔法」が高島嘉衛門、昨年の「3人ジェラール!?」が、アルフレッド・ジェラ―ル、この「マルコポーロの夢」ではマリア・ルス号事件とそれ裁いた大江卓が紹介される。高島嘉衛門も、アルフレッド・ジェラ―ルも、大江卓も、私はこの市民ミュージカルを見て、はじめて知った。
(このミュージカルをきっかけに、多少とも知識が広がるのが楽しみのひとつになって来ている)

マリア・ルス号事件は直球でえがいていて、(はるさちゃん演じる)子どもが殺されるシーンなどはかなりシビアで、市民ミュージカルにしてはけっこうキツい場面になっていたのも印象深い。


今回の「マルコポーロの夢」は、私がこれまでに見た市民ミュージカル(&その範疇に入る公演)のなかでは、いちばんといっていい舞台だったかも。何より、主役の大地少年にひとを得た上演だったことが大きい。

とくに、1回目のステージで大地役を演った塚田匠くんという子は、すばらしくうたが上手かった。なにしろ、序盤の、大地の部屋のシーンで、着替えながらうたうのを聴いて、この子は何者なのだろう?と思った。近ごろの市民ミュージカルには、ときどき、こういうアマチュアの舞台とは思えない子が登場する。

マルコ役のふたりが、またすばらしかった。ふたりとも、そのうた声には、女の子が演じる男の子役ならではの透明感があった。マルコが船の舳先の真ん中でうたうエンディングも、感動的なラストシーンだ。

また、ストーリーの進行役(実はマルコポーロ)のお供のミツバチとカエルが、なんとも秀逸。側転の連発でも魅せたし、「ブン」と「ケロ」が、おもしろ過ぎた。ミツバチの男の子は、昨年公演でちびジェラールを演っていた子だね。


序盤の教室のシーンは、子どもたちのステージングも見どころだったが、1回目の公演では、ふたりの先生が新任教師だったのが、2回目の公演では、ふたりともベテラン教師になっていたりの、配役が変わることによる設定の変化もおもしろかった。

この市民ミュージカルを見に行くようになって3年、(一昨年に)はじめて見たときに注目した、末本眞央くんや、こころちゃん、はるさちゃん姉妹など、常連の子役キャストが大きな役を担っていて、そういう意味でも見どころの多い「マルコポーロの夢」だった。

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