横浜市民ミュージカル 3人ジェラ―ル!?(関内ホール 大ホール)


1月27日(日)は、横浜・関内ホール 大ホールで、

ドラマが眠る街“横浜”/横濱居留地物語
横浜市民ミュージカル「3人ジェラ―ル!?」

(脚本・演出・振付・作詞・美術:福島桂子、音楽監督・作曲・補詞:天野一平、原案:松永春)

を観劇。


昨年はじめて見た中区民ミュージカル「横浜ガス燈物語 キリシタンの魔法 未来への扉2012」がおもしろかったので、今年も楽しみにしていた。

今回の「3人ジェラ―ル!?」から、中区民ミュージカルを横浜市民ミュージカルと改め、公演会場である関内ホールも主催に加わったとある。なんでも、関内ホールというのは、横浜市で唯一の市民文化会館なのだそうな。


全席自由 一般1800円、中学生以下1000円。

チケット代が昨年(一般1500円、中学生以下700円)より値上がりしたのは、中区民ミュージカルが横浜市民ミュージカルへと名称が格上げされたことと連動しているのかな?

2回公演あって、1回目が、11時開演。2回目が、15時開演。

チラシの案内では、開演1時間前から整理券を配付するとのことだったが、2回とも整理券の配付は中止され、会場前の歩道に並んで開場を待った。

2ステージとも、2階席までお客さんが入っていて、昨年よりも、入場者は多かった様子。


上演時間は、約1時間40分。途中休憩なし。(場内アナウンスでは、1時間30分といっていたが、じっさいは10分ほど長かった)

無料配付の公演プログラムは、表紙込み36ページカラー。(昨年のプログラムよりもページ数が増えていたが、広告の多さのおかげでもあろうか)

音楽は、客席前方の上手側で、5人のミュージシャンが生演奏。

出演者は、63名(プログラムによれば、年齢は、5歳〜82歳。このうち、小学生までの子どもは、26名)。一部の配役はダブルキャストになっているが、役替りで2ステージとも全キャストが出演する。

1974年に刊行された、飛鳥田一雄「素人談義三人ジェラール」(有隣堂)という、元市長が書いた本がヒントになってもいるらしい。


同窓会で再会した、幼なじみの3人(吉江、和夫、まさと)は、それぞれに悩みを抱え、人生の岐路にさしかかっていた。そんなアラフォートリオが、開明期の横浜にタイムスリップ。フランスから来日し、いくつもの事業を手がけたアルフレッド・ジェラ―ルのもとで働くうちに、新たな一歩を踏み出すきっかけを掴む、といったストーリー。
そこに高齢者問題や、サラリーマンのリストラ、親子関係などの、今日的な社会状況を織り込んだつくり。

タイムスリップ(夢落ちで処理されていたが)ものなのだが、この市民ミュージカルにはノップという妖精たちがレギュラーで登場するので、タイムスリップでもなんでも、ノップの力でお手のものである。

ご当地・横浜に縁の深いジェラールが登場するのは主人公たちがタイムスリップしての、いわば挿話部分になるが、そこでは、家業だったパン屋を皮切りに、給水事業、瓦工場、肉屋の経営、孤児支援、居留地での娯楽施設の運営といったジェラールの事蹟の数々を、アラフォートリオが関わる場面として用いながら、あっという間に紹介してしまう手際が、いかにもミュージカルらしい力技。しかも、それを作為的に思わせないスピード感で見せていた。(リピートされるジェラールソングが、いまだに耳に残っている)


タイトルは「3人ジェラ―ル!?」だが、中心は、アラフォートリオのなかでも、夫を事故で亡くし、老母を介護施設に預けて仕事に追われる吉江で、小学生の娘・麻里は保健室登校中。ジェラールと盲目の少女・タマ子が親子の絆で結ばれるタイムスリップ先でのドラマを重ねつつ、吉江と麻里の親子の再生がえがかれるが、さらに吉江と母との関係も含めて、母娘孫三代の絆の回復へと収斂され、温かい余韻が満ちる結末へ。

また、タイムスリップ先の瓦工場での、和夫とひろゆき少年の関係性に説得力があった。舞台の上の「現実」の世界では、和夫と彼の息子の関係については具体的には出て来ないのに、ひろゆき少年は和夫の息子なのだなと分かる、そのさじ加減がよかった。


認知症の老人たちが、ノップの魔法で正気に戻って話し出し、踊るくだりはコミカルながら、人間は生きている限り感情があるのだということを、演劇的な手法で表現して、そこに良質な批判精神も窺えた。

アラフォートリオのうち、まさとはインパクトのあるおもしろい役だが、吉江と和夫だけでなく、まさとまでいっしょにタイムスリップしてしまうのは、私にはちょっと分かりにくかった。

1回目公演よりも、2回目公演のアラフォートリオのほうが、若かったね。


タマ子と女の子たちによる、会芳楼でのショーが、とっても見どころ。

こころちゃんて子は、かわいいよね(2回とも演っていた、タマ子の側近の女の子役は、けっこういい役だと思う)。ひろゆき役の女の子が少年役を上手く演じていたのが印象的。あと、ちびジェラールの男の子がかわいかったな。