濡れた太陽 高校演劇の話


前田司郎「濡れた太陽」上・下(朝日新聞出版、上:1680円税込/下:1785円税込)

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サブタイトルに「高校演劇の話」とあるように、五反田団の前田司郎による高校演劇部小説。演劇部員とその周辺人物たちのお話で、時代は「いま」ではなく、著者が高校生だった頃だろう。

いわゆるモテない男子や、地味系女子たちの群像劇になっていて、高校生世代の複雑な心理や未熟なプライド、大人から見れば莫迦々々しいとも思える気持ちの揺れや、恥ずかしくなってしまうような感情を、丁寧に、巧みに文章に掬い取っていて、読みながら、上手く書くなぁと思わされることが、何度も。たしかに、高校生のときって、こんなふうだったな、と頷くこともしばしば。

作中の戯曲「犬は去ぬ」は、ちっともおもしろくないのだが、それも含めて、小説としてのおもしろさは十二分である。(なお、「犬は去ぬ」は、著者がじっさいに高校1年生のときに書いたものとのことだ)