イッツフォーリーズ公演「見上げてごらん夜の星を ミュージカルこそわが人生」


1月24日(火)は、アトリエフォンテーヌで

イッツフォーリーズ公演 ミュージカル「見上げてごらん夜の星を 〜ミュージカルこそわが人生〜」

(原作:永六輔、音楽:いずみたく、潤色:大谷美智浩、演出:北澤秀人、音楽監督・演奏:吉田さとる、振付:三枝宏次、ショー振付:明羽美姫)

を観劇。

過去ログのこの(→http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20111122/p2)公演である。

14時開演。会場掲示の上演時間は、2時間5分(途中休憩なし)。

この公演回は、ミュージカル終了後、10分の間をとって、ゲストによるトークが約30分あって、トークゲストは、今陽子藤山直美

トークショー終演が、16時50分頃だった。


当初、観劇を迷っていたが、トークゲストが発表されてすぐに、所見の回のチケットを購入した次第。

アトリエフォンテーヌは、6月で閉館になるというから、この小劇場での観劇は、私にはこれが、おそらくは最後。はじめてアトリエフォンテーヌへ行ったときは、らせん状に地下へ降りて行く階段がめずらしく、客席とステージの近さにはおどろいた。


公演プログラムは、1000円。表紙がノートのデザインのシャレたつくりで、読み応えのある充実した内容になっている。


いずみたく没20年を記念してのリバイバル上演で、『オリジナル台本に「永六輔いずみたくが、当時何故ミュージカルを作りたかったのか」というサブストーリーを書き加え』たとのことだが、この潤色が、よく出来ている。

もともとの「見上げてごらん夜の星を」では主人公を含めて7人いた夜学生の若者を6人にした代わりに、いずみたくに擬した作曲家と永六輔らしき放送作家を登場させ、ミュージカルの進行と並行して、その作り手である作曲家の苦心譚を挿入している。

上手いのは、今回の潤色で書き加えられた部分が、この和製ミュージカルのテーマ曲として、また、ミュージカルを離れてもよく知られている「見上げてごらん夜の星を」というヒット曲が生み出されるまでの、いわば名曲誕生物語にもなっている点だ。
そのために、過去の公演(http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20120127/p2)では、「見上げてごらん〜」がオープニングでもうたわれていたのをカットしたようだが、ミュージカルのラストに到ってうたわれる同曲の効果は、クライマックスにふさわしい、名曲の味わい深いものである。


昭和30年代後半の、夜間高校に通う若者たちの群像劇。というと、いまではもう50年余りもむかしで、モノクロの旧い時代の話のように思えてしまって、つい敬遠したくなるが、今回の上演では、キャストの衣裳などの拵え(見た目)を当時のリアルなつくりにはせずに、いまの若者が演じているというスタイル。また、2階建てのピアノを模したセット(演技スペースの傾斜がすごい)も、時代色がない。
それによって、視覚的には旧さが隠されて、作品のなかにある年代的な特徴よりも、青春の普遍性といったものが感じられる舞台になっていたのが、とてもよかった。

キャストの衣裳には、さりげなく、音符とかト音記号とかが、お揃いでデザインされていた。

ミュージカルに続けて、フィナーレとして「いずみたくメドレー」ショーがある。


4人のミュージシャンの生演奏での上演だが、終演後のトークショーになっても、そのままミュージシャンが舞台奥に残っているなぁ、と思っていたら、トークに加えて、今陽子さんが「見上げてごらん夜の星を」をうたった。今陽子さんは、いずみたくのお弟子で、デビューする前から、いずみたく作曲のCMソングをうたっていたとのこと。

藤山直美さんは、初舞台が、1964年、梅田コマ劇場での「見上げてごらん夜の星を」大阪再演で、子役のヒカル(マドンナ・ユミコの妹)で出演したのだと(びっくり!)。まだ、5、6歳のときのことで、オーディションを受けたが、こんな役があるよと教えてくれたのが、いまの市川右近丈の母堂だった(ということは、よく知らないけれど、飛鳥流の家元だったひとということだよね?)。
今回の舞台と同様、劇中に出るおにぎりは本物だったとのことだ。


なお、所見の回の、ダブルキャストになっている出演者は「B」のキャストで、子役のヒカル役は、池田優佳さん。


客席は、平日の昼公演とはいえ、年配のお客さんの比率が高くて、いささか意外にも思ったが、リアルタイムで坂本九さんのうたに親しんだ世代が観客の中心ということだろうか…

それにしても、藤山直美さんをあんなに間近で見たのは、はじめてだったな。