ピローマン (於 パルコ劇場) その2
先日(11/18)の観劇があまりに刺激的だったので、「ピローマン」をもういちど見たいと思い、
11/20(土)昼、午後2時開演の舞台に足を運んだ。
前回は最前列だったのが、今回は、舞台が遠い。が、その分、セリフに気持ちを傾けて見ることが出来た気がする。
この舞台、見るひとによっていろんな視点や、感じ方があるのでしょうが、
「物語」を媒介にした、登場人物のキャラクターや関係性のえがき方がとっても緻密で、その上手さがなんとも心地いい。
カトゥリアンの書いた「物語」を介することで、彼と兄ミハイルの関係やお互いの感情を浮かび上がらせて行く一幕後半のシーンが、じつにスリリングだ。
カトゥリアンにとって唯一の自伝的作品だという「作家とその兄弟」について、モデルにされたミハイルが抱いている不満は、小説におけるモデル問題という実際に起きている現実にも通じるものだし、自分の作品を守るためにとるカトゥリアンの行動は、いわば作家の業とでもいうものかも知れない。
カトゥリアンが最後につくる物語のなかで、ミハイルがピローマンの説得を退け、弟と弟が書く物語のために虐待されても生きることを選んだ、とする終幕には切ない余韻があるが、それだけでなく、自分も兄も、結局は物語に奉仕したのだ、というカトゥリアンの作家としての業の深さをも感じずにはいられない。
取調べをする刑事トゥポルスキによる 線路を歩く少年と高い塔にいる老人の話は、客席の笑いを誘いながら、彼に自分を語らせ、歳をとったとき子どもたちに感謝される「物語」にこだわる刑事アリエルのあり方も、面白い。
(ダブルキャストの)子役は、福地亜紗美ちゃん。
「小さなキリスト」のお芝居を、一見 カトゥリアンの物語の視覚化と思わせながら、ただの劇中劇ではなく、「小さなキリストの女の子=緑まみれの少女」という事件の真相へつなげる展開には、改めて感心してしまった。
マーティン・マクドナー 作
目黒条 訳
長塚圭史 演出
CAST
作家カトゥリアン: 高橋克実 その兄ミハイル: 山崎一
刑事アリエル: 中山祐一朗 刑事トゥポルスキ: 近藤芳正
母: 宮下今日子 父: 岩田純 子供: 福地亜紗美 (ダブルキャストで、もうひとりは岩井優季)